観光船沈没事故をきっかけに、世界自然遺産の北海道知床岬で進む携帯電話基地局の建設計画に対して、疑問の声が広がっている。
2022年4月に知床半島沖で起きた沈没事故では、船長の携帯電話がつながらず緊急対応が遅れた。国や地元自治体などは、不感地域解消のためとして、基地局の設置を決定した。だが、世界遺産の適正な管理を助言をする科学委員会での説明や世間への公表が不十分なままの決定に異論や批判が続出。今年度中に運用開始の予定だったが、今年5月以降、工事は中断されている。
研究者や自然保護団体が問題としているのは、世界遺産の核心地域で、本来なら人が手を加えることは厳重に制限される知床半島の岬付近(斜里町)と東側のニカリウス地区(羅臼町)での計画だ。
知床岬では、電源確保のためにサッカーコート並みの敷地に264枚の太陽光パネルを並べ、アンテナを設置する灯台まで約2キロのケーブルを埋設する。ニカリウス地区で計画しているパネルは320枚だ。
世界遺産条約では、顕著で普…